ERP活用、期待外れに終わらせないために知っておくべき「3つの壁」とその乗り越え方

ERPの効果を享受できない3つの原因と改善策

主なコンテンツ

  • ERP導入自体が目的となってしまう要因と改善
  • ERPが機能する業務プロセスの設計方法
  • プロジェクトを円滑に推進させるためのポイント
目次

はじめに

デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる現代において、多くの企業が経営基盤の強化や業務効率化を目指し、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)システムの導入や刷新を進めています。ERPは、企業全体の経営資源を最適化し、データに基づいた迅速な意思決定を可能にする強力なツールです。しかし、多大な投資と労力をかけて導入・刷新したにもかかわらず、「期待した効果が得られない」と悩む企業が少なくないのも事実です。
一体なぜ、ERPの導入や刷新は期待通りの成果に繋がらないことがあるのでしょうか? 本稿では、ERPプロジェクト(導入・刷新を含む)が直面しがちな「3つの壁」に焦点を当て、その概要をご紹介します。これらの壁を事前に理解し、適切な対策を講じることが、ERP活用の成功に導くための第一歩となるでしょう。

壁1:経営ビジョンとERPシステムの不整合という壁

一つ目の壁は、企業が目指す「経営ビジョン」と導入・刷新する「ERPシステム」との間に生じる不整合です。
ERPの導入や刷新が、現行システムの置き換えに終始してしまい、企業が本来達成すべき戦略的目標とシステムが連動していないケースが見受けられます。

この壁を乗り越えるためには、企業の理念やビジョン、経営目標から具体的なKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を設定し、それらをERPシステムで定点観測できる仕組みを構築することが不可欠です。
また、これらの指標に対する組織内での責任範囲を明確にすることも、ビジョンとシステムの連携を強化する上で重要なポイントとなります。

壁2:目的と実務を繋ぐ「設計」の不在という壁

二つ目の壁は、ERPで実現したい目的と、日々の実務を繋ぐための「設計」が十分になされていないことです。
具体的には、「業務プロセスの設計」と「データモデルの設計」が曖昧なままプロジェクトが進行してしまうと、導入・刷新後に「業務が複雑化した」「必要なデータが取り出せない」といった問題が生じがちです。

この壁を克服するためには、既存の業務プロセスに固執するのではなく、ERPの導入や刷新を機に業務効率化や属人化の排除をどう実現するかを具体的に設計し直す必要があります。その際、「Fit to Standard」という考え方、つまり自社の業務をERPの標準機能に合わせていくアプローチが有効な手段の一つとなり得ます。
また、将来的なデータ活用を見据えたデータモデルの設計も、システムの長期的な価値を高める上で欠かせません。

壁3:キーパーソンの役割責任が不明確で「他人事」になる壁

三つ目の壁は、ERPプロジェクト(導入・刷新を含む)におけるキーパーソンの役割と責任が曖昧なために、プロジェクトが「他人事」化してしまうことです。
特に、システム側の視点を持つ「システムオーナー」と、業務側の視点を持つ「ビジネスプロセスオーナー」の連携不足は、プロジェクトの遅延や形骸化を招く大きな要因となります。

この壁を乗り越えるためには、プロジェクト開始前から両オーナーの役割と責任を明確に定義し、プロジェクトの進行に合わせて常に両者が連携を取りながら意思決定を行える体制を構築することが求められます。
また、経営層を含む意思決定者が、変革に対する強いリーダーシップを発揮し、トップダウンでプロジェクトを推進していく姿勢も不可欠です。

さいごに

本稿では、ERPの導入や刷新が期待外れに終わってしまう主な原因として、「経営ビジョンとERPシステムの不整合」「目的と実務を繋ぐ『設計』の不在」「キーパーソンの役割責任の不明確化」という3つの壁をご紹介しました。

これらの壁は、決して乗り越えられないものではありません。それぞれの壁の特性を理解し、適切な対策を事前に計画・実行することで、ERPシステムはその真価を発揮し、企業の持続的な成長を力強く後押しするはずです。

今回ご紹介した内容は、いわば問題提起の序章に過ぎません。
より詳細な原因分析、そして具体的な解決策や実践的なアプローチについては、ぜひ下記の資料をダウンロードしてご確認ください。
皆様のERPプロジェクト(導入・刷新)の成功の一助となれば幸いです。

ERPの効果を享受できない3つの原因と改善策

本資料では、ERP導入プロジェクトが陥りがちな「3つの主要な原因」を深く掘り下げ、企業のビジョンとシステムを連携させる方法から、実務に即した業務設計、プロジェクトを成功に導くための体制構築まで、ERPの潜在能力を最大限に引き出し、真のデータドリブン経営を実現するための実践的なノウハウを解説します 。

主なコンテンツ

  • ERP導入自体が目的となってしまう要因と改善
  • ERPが機能する業務プロセスの設計方法
  • プロジェクトを円滑に推進させるためのポイント

この記事を書いた人

2005年 有限責任監査法人トーマツ入所。現東証プライム上場企業をはじめ、幅広い業種・規模の企業に対する法定監査業務、内部統制監査制度の導入支援業務、IFRS導入支援業務に従事。その後、当社に入社し、2017年より部長職。経理財務部門における生産性向上を実現するAccounting Tech®Solution事業を推進し、2020年 Strategy & Operations事業部 事業部長に就任。上場企業向けに、経営管理体制構築支援、経理財務部門における生産性向上の支援、PMI(Post Merger Integration)プロジェクトの支援、経理BPOサービスなど、多くの案件を手がけるほか、専門誌の執筆やセミナー講師を多数実施。

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