海外進出の成否を分ける「コーポレート機能」という最後の砦

目次

はじめに

少子高齢化による国内市場の縮小、そして地政学リスクの高まりによるサプライチェーンの再編圧力。現代の日本企業を取り巻く環境は、かつてないほど複雑かつ不確実なものとなっています。こうした状況下で、企業が持続的な成長を遂げ、企業価値を向上させていくためには、海外、特に成長著しい新興国市場へと活路を見出すことが不可欠な経営戦略となっています。

多くの経営者がこの潮流を認識し、海外展開の舵を切っています。M&Aによる現地企業の買収、販売代理店の開拓、あるいは自社での拠点設立など、その手法は様々です。しかし、華々しい「攻め」の戦略の裏側で、その成否を最終的に決定づける「守り」の重要性が見過ごされてはいないでしょうか。

企業の海外進出における論点について、株式会社タナベコンサルティングのコラムでは、その必要性とメリットが的確に指摘されています。

“国内市場の成熟化と人口減少に直面する日本企業にとって、海外進出はもはや選択肢の一つではなく、持続的成長のための必須戦略となりつつあります。特に、経済成長が著しい東南アジアやアフリカなどの新興国市場は、日本企業にとって大きなビジネスチャンスを秘めています。(中略)海外進出は、新たな市場へのアクセスによる売上拡大だけでなく、生産コストや人件費の最適化、さらには多様な文化や価値観に触れることによるイノベーションの促進など、企業に多岐にわたるメリットをもたらします。”
出典:【2024年最新】海外進出のメリット・デメリット、成功のポイントを徹底解説 | Vision | タナベコンサルティング

まさにその通りであり、海外市場がもたらす機会は計り知れません。しかし、CFOをはじめとする経営管理部門の視点から見ると、この「グローバル化」という航海は、美しい海図だけでは乗り越えられない荒波に満ちています。言語や文化の壁はもちろんのこと、法制度、税制、会計基準、そして商慣習といった、事業の根幹を揺るかしうる「見えざる壁」が次々と現れるのです。

CFOを待ち受ける「グローバル経営管理」の壁

海外進出を本格化させた企業が直面する課題は、単なる物理的な距離の問題ではありません。それは「経営の可視化」と「ガバナンスの浸透」という、より本質的な課題です。例えば、以下のような問題に心当たりはないでしょうか。

見えない海外拠点の実態

  • 現地から月次報告は上がってくるものの、その数字の背景にあるオペレーションの実態が見えない。
  • 本社が気づいた時には、深刻なコンプライアンス違反や不正の温床となっていた。

バラバラな会計基準と業務プロセス

  • 各国の子会社が独自の会計システムや業務ルールで動いており、グループ全体の正確な財務状況を連結決算でタイムリーに把握できない。
  • 結果として、経営判断が常に後手に回ってしまう。
  • レポートを作成するために、複数のシステムから手作業でデータを抽出し、Excelで集計している。

為替リスクと国際税務の複雑化

  • グローバルでの資金効率を最大化しようにも、為替変動リスクや移転価格税制といった専門的な課題に対応できる人材が本社にも現地にも不足している。

形骸化するグローバルガバナンス

  • 本社で策定したはずの内部統制やリスク管理のルールが、現地法人に「自分たちのやり方がある」と反発され、一向に浸透しない。

これらの課題は、海外事業の収益性を損なうだけでなく、グループ全体の信用を失墜させかねない重大なリスクです。市場を開拓するという「攻め」の戦略がいかに優れていても、それを支える経理財務、経営企画といったコーポレート機能、すなわち「守り」の基盤が脆弱であれば、船は容易に座礁してしまいます。

「攻め」の戦略を成功させるための「守り」の変革とは

海外進出の成功とは、単に海外拠点のPLが黒字化することではありません。本社と海外拠点が有機的に連携し、グループ全体の経営資源が最適に配分され、統一されたガバナンスの下で持続的な成長を遂げる「真のグローバル企業」となることです。

そのためには、現地の文化や商慣習を尊重する「ローカライゼーション」と、グループ全体で守るべき基準を統一する「グローバルスタンダード」のバランスを、戦略的にデザインする必要があります。具体的には、会計方針の統一、業務プロセスの標準化、そしてそれらを支えるグローバルERPのような統合システムの導入が不可欠なピースとなります。

さいごに

この「守り」の変革を遂行し、強固なグローバル経営基盤を構築することこそが、グローウィン・パートナーズの使命です。私たちは、企業の「参謀」としてクライアントの経営に寄り添い、理想のグローバル経営管理体制の構築を実現します。海外子会社の設立支援から、M&A後のPMI(Post Merger Integration)、グループ全体の業務改革、そしてグローバル連結管理体制の構築まで、一気通貫で伴走します。

海外進出という壮大な航海は、決して平坦な道のりではありません。しかし、強固な羅針盤(経営戦略)と、精密な航海計器(経営管理体制)があれば、必ずや目的地にたどり着くことができます。

海外進出のメリットや具体的なステップについて、より網羅的な情報を知りたい方は、ぜひ下記のタナベコンサルティング様の元記事もご参照ください。貴社のグローバル戦略を構想する上で、新たな視点が得られるはずです。

【2024年最新】海外進出のメリット・デメリット、成功のポイントを徹底解説 | Vision | タナベコンサルティング

この記事を書いた人

「成長と成功を支援する」理念のもと、多様な上場企業の成長戦略を策定・実行支援してきたグローウィン・パートナーズ株式会社。同社の編集局が、CFOが直面する複雑かつ重要な経営課題の解決に資する専門情報を発信します。企業の持続的成長と価値向上に不可欠な戦略財務、リスク管理、M&A、DX等、高度な専門性が求められる経営課題に対し、企業価値最大化の羅針盤としてぜひご活用ください。

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